読書会「K社のとなり」

定員5名ていど、期間限定で開催中の小さな読書会の記録です。

第9回読書会『和宮様御留』報告

(2019年7月13日開催,参加4名)

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第9回報告

「公武合体」という一大プロジェクトのかげで

● けっきょく天皇の直系女子(という名目)であれば誰でもよかったという虚しさ。

←身代わりの人選(フキ)もとりあえず手近にいて、年格好が同じならいいだろうという安易すぎる発想。後に宇多絵を連れてきた岩倉具視との人脈力(?)の差が痛い。

● 宮中の女官同士の権力争い、幕府に対する点数稼ぎ競争、そしてなにより「金」。それぞれの思惑と足の引っ張り合いが外から見ると喜劇的。

←しかし、当事者視点だと一転して悲劇……(庭田嗣子とか)。

● ある意味「天下の一大事」なのに和宮「自分の足が悪いのを見られるのがイヤ」……え、降嫁反対の理由ってそんなささいな個人的コンプレックスだったの? と衝撃を受けた。

←その六で酒井忠義が抱く感想と同じなのが面白い。たしかに些細なことですが、当人にとっては致命的ともいえる障害だったことがその十二で語られています。

  「本物」の宮様はどこに消えたのか? 橋本実麗は宇多絵を見てどう思ったのだろうか?

←藤とともに満徳寺へ入ったと思われる(その十八)。宇多絵に入れ替わった後は、もう身内といえども外の男性とは接触できない状況(その十七「江戸では大名家であっても、女の傍に決して男を寄せつけることはござりませぬ」)で、実麗と宇多絵の対面はなかった筈。

● とにかくいま現在の「和宮」に仕えるという少進のプロ意識が、ゴルゴ13なみに凄い!

 

その他あれこれ

 ● 「御するするあいすみ参らされまして、まことに有難う忝う、お芽出とう存じ上げます」こんな御所言葉の羅列に最初はとまどうが、だんだん癖になり気持ちよくなってくる。

 ● 観行院、庭田嗣子など女性の登場人物が怒涛のごとくしゃべくるシーンに圧倒される。

←庭田嗣子が江戸方に対し漢語も交えてとうとうとしゃべるのは、言葉の弾幕で圧倒して和宮に近づけさせないという意図もあり。女房ことばも立派な武器になるんですね。

  花びら餅・粽が美味しそう(川端道喜謹製)!

←川端道喜(かわばたどうき)、現在も営業してます。完全予約制。ちまきが一本4000円くらいするらしい……

● 登場人物の誰にも共感できない。別世界の生物の「生態」を観察しているような気分。

←ただ、章によって語り手(視点)が違うため、「この人の立場に置かれれば、たしかにこうせざるを得ないだろうなー」「こう思うのも無理ないなー」というレベルでは理解できる。あらためて有吉佐和子の筆力に舌を巻いた。

● その六で酒井忠義と三浦七兵衛について「小浜藩十万三千五百石の藩主と家老という間柄であったが、二人の仲はもっと親しい」とあるが、この二人は念友だったの?

←あくまで個人の感想です。

 

【お持たせ】基本的にはお気遣いなく。感謝をこめて記録。

京都三条菓子司 寛永堂 まろのおみた

【お茶菓子】甲月堂   生菓子(撫子)

宝鏡寺さんの中庭は、そのとき花の盛でございました。花弁の長い撫子が燃えるように咲き揃うているのを、宮さんが一つ一つ眺めながら飛び石づたいにお歩い遊ばされて(『和宮様御留』その十二 より)