読書会「K社のとなり」

定員5名ていど、期間限定で開催中の小さな読書会の記録です。

第10回読書会『ムーミン谷の仲間たち』報告(前編)

(2019年8月3日開催,参加5名)

まず、人気ランキング。

今回の課題本は9編の作品から成る短編集なので、いつもとはちょっと変わった趣向として事前に参加者それぞれの「ベスト3」を選んでいただきました。上位3編には入らなかったものの捨てがたい……という「次点」をコメントに書いてくださった方もいたので、「ベスト3入り」=1ポイント、「次点」=0.5ポイントとして点数を集計した結果、以下のようになりました。

1.この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ(3.5ポイント)

2.しずかなのがすきなヘムレンさん(3ポイント)

3.世界でいちばんさいごのりゅう(2ポイント)

3.目に見えない子(2ポイント)

3.ニョロニョロのひみつ(2ポイント)

3.スニフとセドリックのこと(2ポイント)

7.春のしらべ(1ポイント)

7.もみの木(1ポイント)

9.ぞっとする話(0ポイント)

世界のおわりにおびえるフィリフヨンカ

・自分でお片付けしなくてもたつまきが全部持っていってくれた。羨ましい。うちにも竜巻が来てほしい。

・巨大なエネルギーが解放され、フィリフヨンカも抑圧から解放される。ヤンソンが自らの性的アイデンティティについて悩んでいたのと関係あるかも(もし、ママがこのことを知ったら……)。

・ガフサ夫人の来訪に備えてお菓子を用意する場面

おかしをもりあげた上に、小さいアイスクリームをいくつかのっけました

そんな前からアイスクリームを皿に出してたら溶けてしまわない?! 英語版をみるとiced cakes(アイシングのかかったカップケーキ)とあり、小さなカップケーキをピラミッド状に積み上げたのが真相ではないか。

・あらしで家財の残骸の山→その後の竜巻で残骸がきれいさっぱり運び去られる という二段階にわたるカタルシスが印象的。

・とはいえ、このあと時間が経ったらフィリフヨンカはまたいろいろモノを集めてそう。

・電灯ではなくランプを使ってるけど、電話はちゃんと通じてるんだ……。

しずかなのがすきなヘムレンさん

・挿し絵が美しく、世界にひきこまれる。

・ワイルド『わがままな巨人』とバーネット『秘密の花園』を合わせたような話?

・比較的長いためかストーリーが一本調子ではなく変化があって面白い。

・年金をもらって静かな生活に入るよろこび。(昔読んだとき)子供心にもいいなと感じた。

・すごく理解があって、話のわかる子供たち。もとの遊園地の営業中は子供たちの喧噪におそれをなしていたヘムレンだが、実は子供をあやすため自分はきらいな「手回しオルガン」を鳴らしたり心をくばっていた。

・「おばあさまのむかしの公園」これは邸(花火で焼けてしまった)に付随する「庭園」というのが正確ではないか?

←とはいえ、「公園」のほうが子供にとっては身近なイメージをもちやすいのでは。翻訳って難しい。

・ついでに、何度も出てくる「おもちゃの家」は英語版だとdoll house(なるほどぉ)。

世界でいちばんさいごのりゅう

・ムーミントロールの竜への粘着っぷりがウザい。自分が竜だったら心底うんざりする。

←猫好きで猫に飢えていて追いかけ回すほど猫に逃げられるのと同じ構図では……ムーミントロールの気持ちもわかる!

・最初は水棲生物(みたい)だった竜が、なんで大気中に出てくると火を吐くようになったのか。体内に発熱源を持っているのか、化学反応(2液式)で発熱させているのか。

←ちなみにグリフォンは火を吐いた後や長時間飛んだ後は水に入ってオーバーヒートを解消しないと再び飛べないらしい。

←水から引き上げたのがきっかけで「シン・ゴジラ」みたいに形態変化したのでは?

・ムーミン世界のキャラクターは内面的には「ほぼ人間」(感情移入可能)なのに対し、まったく異質な存在としての竜が身体的特徴も含めこまかく描写されているのが興味深い。その異質な竜のニーズを満たそうと根気づよく努力するムーミントロールはなかなか「いい奴」。

目に見えない子

・殴る蹴る、食事を与えない、などの見えやすくわかりやすい虐待ではなく「氷みたいなひにくをいう」「毎日毎日、一日じゅうひにくをいわれる」という針のむしろ的モラハラの恐ろしさ。

・ムーミンママの「おばあさま」への言及。いろいろな民間療法のレシピを書き残してくれており、中に「人々がきりのようになって、すがたが見えなくなってきたときの手あて」まで含まれていた!

・ムーミン一家は(ミイも含め)それぞれのやり方でニンニを治してやろうと努力するがいまひとつ効果がなく、諦め気味になってきたところで偶然のできごとから回復が起こる。「日にちぐすり」というのでしょうか。

・「りんごチーズ」とは何か。アップルバターみたいなものかと思っていたら、りんご・砂糖・スパイスを煮詰めて作るいわば「りんご羊羹」のような保存食らしい。

msmarmitelover.com商品化して、ムーミンバレーパークで売ったら人気が出るのでは。

(長くなったので、後編につづく)