読書会「K社のとなり」

定員5名ていど、期間限定で開催中の小さな読書会の記録です。

第5回読書会(課題本形式)『ムーミンパパ海へいく』報告

(2019年4月20日開催,参加5名)

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第5回報告

ムーミンパパについて

●「挑戦」と言いつつ、自然をナメすぎなのはどうして?

● ムーミンの世界は、個が個であることを尊重して他人の領域には踏み込まないところだと思っていたが、この作品ではパパが他者を支配しようとしているように見える。

● 灯台に灯が点っていたら灯台守が住んでいるだろうし、無人なら灯は消えているだろうに、どうして灯の点いた灯台が手に入ると思ったのか?

ムーミンとうみうま・モラン

● いつからムーミンはうみうまよりもモランが好きになったのか?

● かなぐつを渡してあげたうみうまがどちらなのか悩むのはなぜ?

● うみうまはなぜムーミンをからかったのか?

なぜモランはおばさんという設定なのか?

● ムーミンは(モランを)恐れているのか、心惹かれているのか?

島・灯台もり・その他

● ママがとつぜん島への移住を言いだしたのはどうして?(パパが放火をしかねないほど煮詰まっていたから?)

● 鍵を探すパパの述懐に出てくる「義父・義母」(ムーミンママの両親?)とは。前に出てきたことがある? ⇒過去に登場例はない。

● 灯台に入ったときの内部の荒れ具合、後に出てくる小さな墓の群れ。灯台もりが精神の均衡を失っていたことを暗示するようで怖い。一家が上陸する前の島で何があった? 

● 黒池の正体、象徴していたものは?

● 木が移動したのは島が生きていたから? それともモランのせい?

● 一家はムーミン谷に帰らないのか?

作品全体について

地の文の語り口にしばしば感情が入り込んでいる、あまり他には見かけない表現。誰の視点からの語りなのか迷う。

● 文庫版で訳者が解説しているヨーロッパ的なお父さんと日本的なお父さんの対比について

 

パパがんばれ

予想はしていましたが、ムーミンパパへの厳しいコメントが目立ちました! 

雨漏りや破れ窓の補修、海藻のからみついた漁網のメンテなど必要不可欠の作業にはいっこうに頭も体も向かっていかないパパ。食料確保の努力(魚釣り)にも

逃避じゃないの?

と厳しい目が向けられ……一応、釣った魚をきちんと燻製にしたりしてはいるんですけれどねぇ。

 

内面の危機を迎えたパパに気を遣って家族が相当フォローしている。そのためかこの作品では珍しくムーミンママが怒り、不安、ホームシックなど生の感情を表に出しています。

 

最後には悩みが吹っ切れて「耳のはしからしっぽの先まで、生気があふれてき」たパパですがムーミントロールの「春のめざめ」にはまったく気づく様子がなく……

 

海と対話するより家族と対話しろ

 

と言われても仕方ないかな。家族それぞれの悩みとブレイクスルーを描いた小説として非常に面白いし、この裏で、ムーミン一家のいないムーミン屋敷に訪れた悩み多き客たちの姿を描いた

新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

もお薦めですよ。みなさん、たまにはムーミンを読んでみよう!

 

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