第8回読書会『ムーミン谷の十一月』報告
(2019年6月15日開催,参加5名)
作品全体をつうじて
● 訪問者みんな「自分がもてなされるのは当然」と思いすぎでは?
←とくにムーミンママが多くを期待されている。ヘムレンさんだけはムーミンパパと話し合いたいと思っている。
● ムーミンシリーズの他の作品と比べて自然描写が多い。たとえば
見わたすかぎり、青葉が夏のそよ風に波立ち、まわりも、頭の上も、青葉でおおわれ、草の葉に日の光がこぼれ、まるはなばちの羽音がうなり、こうばしいかおりがたちこめています。(第2章、ホムサの空想の景色)
きえかかった秋の夜が足ぶみして、遠い夜あけを待つあいだに、海から霧が流れてきました。霧は山はだをつたって峰をこえ、向こうの谷間に流れていって、すみずみまでたちこめました。(第11章)
スナフキン
● 4章に出てくるスナフキンの旅の経路「南へ南へと旅をつづけていきました」、巻頭にあるムーミン谷の地図とつきあわせても位置関係がよくわからない。
←巻頭地図、たしかに上=北と考えるとむしろ北上しているように見えて、謎。
● 12章で、ヘムレンが作った「ムーミン谷」の看板をみて逆上するスナフキン。いったい何があった?
←『ムーミン谷の夏まつり』でもスナフキンは公園内の立て札を実力行使で排除している。小国フィンランドの、ソビエト連邦(当時)による支配管理を退けようとする意志を読み取るのはうがち過ぎか。
フィリフヨンカ
● 3章、大そうじ中に屋根の上にとりのこされる描写がすごい。この章だけで短篇小説になりうるのではと思うくらい。
● 最初、ムーミンママへのお土産に「銀の花びん」を持っていこうとしていたのに「せとものの花びん」に替えた理由は?
←屋根から生還後の高揚感から奮発したものの、時間が経ち日常の感覚(もったいない……)が戻ってきたのかなぁ。
● 2章でスナフキンの視点から語られる、フィリフヨンカの冬支度の閉じこもり感が好き(自分の持ちものを、できるだけ身ぢかに、ぴったりひきよせるのは、なんとたのしいことでしょう)。
ホムサ・トフト(ヘムレンのヨットに住んでいる)
● 「ホムサ」「トフト」の使い分けはどうなっているの?
←ホムサは種族名、トフトはこの作品に出てくるホムサの個体名(スウェーデン語でヨットのこしかけ板を「トフト」というのに由来?)
● 「ぼくの作ったかみなりでムーミンママをしかってやったんだ」(12章)不在の母親(的存在)への怒り?
● 作業能力いまいちのヘムレンさんの助手としてこきつかわれ可哀想。
ヘムレン
● 9章「命令は男がするんだ。男だ、男だ」権威的な家父長像を追い求めるヘムレンと、良き主婦像にしばられるフィリフヨンカ。この二人はある意味、似たもの同士なのかも……
● 20章でヘムレンさんが乗ったヨットは誰のもので、どこにあったのか?(ムーミン一家のボートは、灯台もりの島へ一家が乗っていったはず――『ムーミンパパ海へいく』参照)
スクルッタおじさん/ミムラねえさん
● スクルッタおじさん、薬やメガネを大量に持っていたり「人間の老人」っぽい感じで他のキャラクターとは異質。
● ミムラも、ムーミン家の養女になった妹のミイに会いに来ただけでムーミンママに救いを求めてきたわけではなく、やはり他のキャラクターとひと味違っている。
● 19章、ミムラはなぜフィリフヨンカと一緒に出て行ったのか?
←フィリフヨンカが帰ってしまうと、もう料理・掃除など自分のために環境を整えてくれる者がいなくなるから、かなぁ。
【お茶菓子】寛永堂 京の鮎
ファッツェル ゲイシャチョコレート